115) 日本2018ジャパネスク・・・あなたと日本の話をしてみたい・・・ Vol.4

私たちの日本は、変化に富む季節と、豊かな自然に恵まれた国です。私たちの生活と文化の一切はその上に成り立っています。そのことを現代都市は忘れ去ろうとしています。

わが国は、日本海と太平洋に囲まれた南北に長い島国です。南西日本は亜熱帯まで、北日本は亜寒帯まで広がっています。列島の上空には偏西風が吹き込んでいます。海洋は、高気圧の西縁にあたり、低気圧が北上する通路になっています。特に、モンスーン地帯の特徴である、6月から7月にかけての南東季節風は、梅雨前線を生じさせ、各地に大量の雨を降らせます。そして、熱帯の海上で発生する低気圧は、大雨や暴風をもたらします。

国土の大部分は、大気の流れを生み出す気候と、四方を海に囲まれている地形の影響を受けて、四季の変化が明瞭にあらわれます。夏と冬は、季節風によって明確に区切られています。

私たち日本人は、高温多湿な気候と、寒暖の明らかな季節のもと稲作をはじめとする生業を営んできました。四季折々の自然の恵みは飲食物や衣服などの材料となり、移り行く季節の気配は詩歌や絵画などの題材となりました。

季節によって、自然の運行と人の生活は結ばれています。季節の不順は、人に被害を与える災異のもとです。そのために、人々は、季節と季節の替わり目に、自然への感謝と畏怖の念を表す祭祀や行事をしてきました。

人は季節の変化を基本とする自然の暦にしたがって、農作業などを行い日々の営みをしてきました。さらに、自然の暦を月日の運びと重ねる「日よみ」がつくられ、それに基づいて生産や行事のすべての手はずが整えられました。「日よみ」は、地域の季節や気候、地形などの自然環境によって異なります。そのために、各地に農業や漁業などの暦がつくられました。

一般的な暦も、季節の一巡りを1年とし、12か月を四季に分割して、それぞれ、初春、仲春、季春とに分けられます。その基本は、明治まで長期間使用されていた、月の満ち欠けによって月日を数える旧暦と呼ばれるものです。日本人が大切にする季節感は旧暦によって整えられました。この暦による宮中をはじめとする年中行事は、現代は、極く一部を除いて、新暦に移行するか、1か月遅れで実施されています。そこには、季節感はもはやありません。

現代社会は、暑さ寒さも調整され、食物の多くも旬がなくなりました。人は自然のもとで暮らすことを止め、人工的な環境のもとで日常生活を送っています。自然は、いまや、生産に必要な資源の供給地となりました。

季節感溢れる生活と文化には、自然に随い季節に合わせて生きることの豊かさや美しさがあります。人と自然、季節と暦のネットワークを改めてつくる必要があります。私たち日本人の自然を畏敬し感謝してきたこころは、今日の地球規模の、科学技術至上主義による物質文明の飛躍的発展のなかで、かえって大きい価値を持っているのではないでしょうか。

平成30年5月28日
勝田祥三(NPO PTPL理事長)

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